脊柱管狭窄除圧手術入院記
8月19日(月)から24日(土)まで入院して脊柱管狭窄除圧手術を受けてまいりました。
手術は20日(火)午後、約2時間半の手術、翌日にはベッドから立ち上がって病院内を歩き回り、翌々日から理学療法士に指導されてリハビリトレー二ングを始めました。低侵襲の内視鏡手術というのはこれほどまでに体の負担が少ないのか、と実感しました。脊柱管を走る脊椎神経を圧迫していた黄色靭帯を切除して、圧を取り除き痛みを除去してもらいます。足底にあった異常感覚は完全に消えていませんが、痛みはなくなりました。痺れ、皮膚のざらつきが残っていますがこれはもう少し経過を見ることになるようです。5泊6日の入院は各スタッフの規律高い働きやキチッとした連携ぶりに大変感心させられました。人の命、健康を守る病院だけに当然と言えば当然ですが、徹底したプロフェッショナルな仕事に敬意を憶えました。
手術に関し不安や効果に疑問を持ち手術を回避する方も大勢おられると思いますが、入院がどのようなものだったかご参考までに披露します。
脊柱管狭窄による激痛発症は2022年1月、整形外科クリニックの受診下、運動と鎮痛投薬で保存療法を2年5か月行い、外科手術を検討する目的で脊椎専門外科病院を受診したのがこの6月で、7月および8月に外来診察を受けて入院するに至ったものです。
8/19 第一日 手術前日
10:00に受付後、病棟看護師に迎えられて4人大部屋に入りました。昼食をすませると次々に薬剤師、栄養管理士、理学療法士がやって来て入院中の服薬の指示、毎食「軟菜食」(胃全摘者用に準備してくれました)の確認、手術翌日からのリハビリプログラムの紹介を受けました。
また入院期間中は6時14時17時に自分で体温測定をすませ記録するように言われます。看護師巡回時は体温確認とともに血圧、血中酸素濃度を測り、足指先を上下にパー、グーにして看護師が反対方向に圧をかける力比べをしました。下肢の麻痺、筋力状況を調べるためです。
15:00シャワーを浴びて体をよく洗浄。ベッドに戻り背中をイソジンで消毒されました。だんだん明日の手術に向けた臨場感を感じるようになります。夕食前、執刀医が部屋に来てくれましたが、CT画像のコピー(腰椎)を見せられ
「あなたには腰椎が6個ある」 と告げられたのは衝撃でした。
人の腰椎は通常5個ですが、15%の人は6個、5%の人が4個で、基準外のケースは珍しくないそうです。削る腰椎の番号を間違うと大変ですから、手術前にしっかり確認するのだそうです。私の場合は第4と第5の腰椎の後方部分 椎弓に穴(径16㎜)を開けて中にある黄色靭帯を切り出します。黄色靭帯は脊髄神経を囲んで衝撃から神経を守る組織ですが、加齢により硬化したり肥厚して神経を圧迫、下肢に痛みを生じさせます。その圧迫が出て脊髄神経が走る脊柱管の隙間が狭くなることを狭窄といいます。狭窄のある腰椎と痛みの生じる位置は相関があり、足裏は第5となります。ただし、私のMRI画像は第3~4腰椎間の狭窄が重症なのでその箇所に時間をかけると執刀医から教えられました。
腰椎が6個あったせいなのか、保存療法のかかりつけ整形クリニックの先生が、すべり症が第3腰椎とか4番とか、番号を時々間違えていたことに私は混乱したことがあります。あの先生は腰椎6個を認識していなかったのかも知れません。
その夜、4人部屋患者は私ともう一人の2人でした。
8/20 第二日 手術当日
手術は12:45からの予定です。前夜21:00から今朝07:00まで水分(水、葉のない茶)のみ、07:00以降は絶飲です。
10:00点滴開始、12時前に抗生剤点滴追加、予定より少しは早く12:20に手術室に運ばれました。口に酸素マスクをあて麻酔を注入されたとたんに意識を失い、一度目覚めたのが手術終了後の15:15、ついで目覚めたときにはベッドの上で仰臥、尿ドレーン、血液ドレーン2本(背中の切開2ケ所)、酸素マスク、点滴2本で寝た切り状態でした。
執刀医の術後説明も夢現(ゆめうつつ)、成功あたりまえなのか、医師から「うまくいきましたよ」とも「成功です」とも言われた記憶がありません。医師のいうままに足先を上げ下げしたり、力比べをしたりして、麻痺や筋力低下がないことをチェックされました。その夜は疲れて19:30に眠りに落ちます。
新しい患者一人が入っていてそのいびきでなんどか目が覚めましたが、まずまず眠れました。
8/21 第三日 歩行開始
07:00には採尿ドレーンを外されベッドから起き上がり、着替え、清拭をしました。看護師が記念にと小さな瓶に入った切除した黄色靭帯、血まみれの骨(椎弓の一部)を持ってきてくれました。持ち帰りができないので写真撮影をします。
執刀医がやって来て「歩けましたか?」が第一声でした。内視鏡腰椎除圧術が優れた低侵襲手術とはまさに額面通り。ソフトコルセットを着用して、痛みもなく普通に歩くことが出来ます。つい無意識に足を伸ばして立ったまま腰を曲げてしまいがちですが、これは1か月は禁止だそうです。でも普通に痛くもなにもなく動作ができます。それでも1か月は左右、前後の体の曲げ、捩じることは禁止です。
歩いてレントゲン室に向かいますが、体には出血ドレーンが二つついています。それぞれ50㏄ほどでこれは標準的な出血量、そこからはほとんど量が増えて来ることはありませんでした。理学療法士のリハビリ前のガイダンス、手術後の体調確認で麻酔医が部屋まで来てくれました。
同室の患者お二人が会話しているのが耳に入ります。一人は脊柱管狭窄除圧手術をすでに受けて翌日退院、新しい方は頸椎ヘルニアで明日以降に手術を受けます。
夕方には体温が37℃を越えました。手術後2~3日は微熱になりますが看護師によれば想定内だそうでした。
夕食前執刀医と出身地の話題。大阪府で私も良く知る名門校の卒業生でした、利発で勉強好きな、お転婆娘がすくすく育ち、そのまま医師になった、という風です。患者の私がなにを質問しても、馬鹿にせず、分かりやすく丁寧に答えてくれる賢明な女性医師です。
8/22 第四日 大部屋個室状態
早朝看護師が採血。9時前に執刀医が来て血液ドレーンを抜いてくれました。抜く作業は痛いですが、身についたチューブ類がなくなって一挙に体が楽になりました。
理学療法士がついてリハビリ。せいぜい30分、体幹と足(四頭筋、ハムストリング、ふくらはぎ)を鍛え、ストレッチで柔軟性を保つトレーニングです。無理のない範囲です。看護師から退院後の受診予約を打ち合わせたら、突然、「明日でも退院できるがどうですか?」と聞かれて面くらいました。土曜日にかみさんが病院まで荷物持ちで迎えに来てくれる予定ですし、今から準備するのも面倒で断りました。4泊5日で退院も可能ということで、びっくり。
昼頃、新しい患者がこの部屋に入院しましたが、突然、明日の手術を止めたいと言い出したようで、ざわつく中で結局退去してしまいました。この段になって手術のリスクが念頭に昇ったのか、執刀が最若手の女性で不安になったのか? 理由は知る由もありません。私も受診の際「いつでも手術を取りやめたければ申し出て頂いてかまいません」と言われましたが、ぎりぎりでこんな切羽つまったケースもあるのですね。実例を目にすることになりました。
その晩、頸椎ヘルニア手術を受けたはずのお隣ベッドの患者は帰って来ず、大部屋で1人だけ、もはや個室状態になりました。
どうやら手術後の「観察室」に入られたようです(執刀医のヒント)。観察室とは24時間容態管理や麻酔による一時的錯乱に陥り患者身体の安全管理を必要とする場合医療スタッフで見守る部屋です。
8/23 第五日 頸椎患者が戻る
05:30起床。廊下をぶらぶら歩きつつ共用トイレに入ろうとしましたが、二つともすでに使用中でした。共用トイレは3つあり、一つが女性用、二つが男女兼用です。この病院の建物は新しく、トイレも広く清潔でとても使用しやすいですが、高齢者の朝はとにかく早いのです。
朝の執刀医顔出し。温泉は9月初旬の退院後診察で傷口の治り具合を見てから。退院後の日常性生活注意点のパンフレットでも、感染症がこわく、自宅でも一番風呂、入浴剤なしが書かれていました。
昼食前に頸椎ヘルニアの患者が元気よく帰って来ました。後でよもやま話をする機会がありましたが、長野飯田市近くの郡部からバス、JR中央線を乗り継いで4時間余りでやって来られたようです。76歳、鼠経ヘルニア(左右とも)、頸動脈ステント挿入、右膝人工関節置換済み、6年前名古屋で脊柱管狭窄除圧手術を受けたものの痛みが引かず、頸椎ヘルニア手術と脊柱管狭窄の治療を求めてここまで通院しているそうです。この病院は北は北海道から、南は沖縄県まで全国から到来するので珍しくはありませんが、満身創痍で極めつけのような患者さんでした。頸椎ヘルニアは手術の甲斐あって手の痺れは消失したそうです。脊柱管狭窄治療はこれからです。
夕方執刀医が巡回。明日は休日なので入院中の最後の挨拶をしました。手術後撮影したCT画像を持参で、切除した椎弓の個所を教えてもらいました。第4椎骨椎弓、第5椎骨椎弓下端にありました。この医師の博士号は骨粗しょう症の研究なので、骨量測定のあれこれを教えてもらいました。骨粗しょう症気味のかみさんの治療をしてくれるとありがたいのですが、この病院の治療対象ではなく残念なことでした。
8/24 第六日 退院
朝食後、本日退院患者を対象に切開痕チェックで担当医師が巡回して傷口を見てもらいOKをもらいました。
10時過ぎには会計清算をして退院になりますが、その前に病院内のリハビリテーション室でリハビリ。
理学療法士が2人で私を含めて3人の患者が指導をしてもらいます。
8台のベンチや、いくつか筋トレマシンもある広いスペースの本格的なトレーニングルームです。
プロアスリートもこの病院のスポーツ整形専門医にかかっているので、この部屋はよく活用されているようです。
入院期間中から理学療法士つきでリハビリをしてくれる整形病院は希少で貴重だと思います。
お一人は右膝人工関節置換手術を受けてリハビリ中。術後1週間と聞きましたがそれにしては、杖もなく庇うでもなく至って普通に普通の歩幅、スピードで病室まで向かいます。塩分の少ない病院食で残念だが温かい食材を温かいうちに提供してくれて満足だと強調しています。
この病院の患者は概して明るくて意欲的。「手術をうけられる」「治せる」と希望をもって入院している方が多いからでしょう。
元気な患者さんを見ているとエネルギーをもらえます。
とにかくプロ集団、プロ経営の病院です。迎えに来てくれたかみさんと残暑残る中、
汗をかきつつ帰り道につきました。