かみさんが有楽町で用事があったのでお供をしつつ、ついでに東京駅大丸8Fにある京都イノダコーヒ東京大丸店と、食品売り場の和菓子舗 塩瀬総本家売り場に立寄ることにしました。
イノダコーヒ(京都市中京区堺町通三条下る)は京都喫茶文化の象徴的存在で、京都では地元旦那衆、文化人の絶大なる人気を誇ります。ただし東京での知名度はいま一つ、濃厚な渋みと甘みの混じった深煎りの看板コーヒ 「アラビアの真珠」を注文すると、ウェイトレスから『ミルクとお砂糖はお入れしておきますか?』と聞かれて( イノダのマニュアル ) ついつい、全部入れといて、と(私は)答えてしまうのですが、ブラックやミルクだけ、それそれの好みにうるさい東京の人には、要らぬお節介に感じられるような気がします。また蜜たっぷりのアップルパイはイノダの看板商品でもありますが、これもややしつこい甘さで今時風でなく若い世代には好みが大きく分かれそうで、とどのつまりは、お高いお値段もあって中高年ばかりの客が来る落ち着いたカフェになっています。それにしても、朝食メニュー「京の朝食」が2000円にまで値上がりしていることにびっくりしました。
東京駅八重洲口 大丸8Fのイノダコーヒ
正午前の時間でしたので、かみさんと二人で、アラビアの真珠、カフェオレ、フレンチトースト、ハムチーズトーストを注文して軽い昼食をとることにしました。イノダでフレンチトーストは初めてでしたが、いけませんね。厚切りに薄めのバター、砂糖を雪のようにまぶしたもので、想像とは全く異なるフレンチトーストで、まるで単なる砂糖菓子でした。お土産に、定番アップルパイと栗タルトのピースケーキを持ち帰りましたので、今日の午後は京都旅行中のごとき、イノダ三昧になりました。ケーキも濃厚でイノダそのものでした。

粉雪のような砂糖たっぷりのフレンチトースト 窓の外には近畿大学のサテライト東京オフィスを発見しました
看板学部の医学部や、水産研究所 ( 農学部水産学系大学院です。養殖近大マグロ、鯛、鰻研究で有名)の知名度が上がって今や関西最大の総合大学となり堂々全国の学生集めに力をいれているようです
右がイノダ アップルパイ、左 栗タルトケーキ 昔風の野性味さえ感じさせる、しっかりした焼き菓子です
大丸1Fには 塩瀬総本家(本店 東京都中央区明石町)の上用饅頭の売り場がありました。塩瀬は14世紀に日本に移住した臨済宗中国僧 林浄因を始祖とし奈良で小豆餡の饅頭を考案、京都で商いを始めるも応仁の乱で三河塩瀬村に移転、後に徳川家康の江戸開幕に従い日本橋に本拠を構えた由緒を有し薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう、山芋を溶いて焼き上げた薄皮)の創始者とされています。塩瀬総本家は薯蕷饅頭に始まり茶道の上用生菓子をつくる和菓子舗として名を馳せます。塩瀬より1世紀遡る13世紀博多では中国から帰朝した臨済僧 円爾が製法を伝え、承天寺で食用とされた饅頭があり、餡は野菜で作られたものが後に酒饅頭の始まりとされているようです。いずれにしても、塩瀬総本家は薯蕷饅頭の祖を謳うだけあって、人気が今一つの現代にあっても矜持を失わず薯蕷饅頭を常に店頭に並べています。
さっそく5個入りの一番小さな月見饅頭のパックを買い求めて食べてみました。長径6、7㎝の一口サイズです。皮はぱさぱさ感なく、かといって梅園饅頭のように指にまとわりつく粘り気もなく丁度よく摘まむことができます。こし餡はきめ細かく甘すぎず上品な味わい。これだと5個ぐらいはすぐ食べてしまえます。さすがに、この甘さ控えめは熱田神宮きよめ餅や京都東寺餅と共通していて洗練された味覚がおのずと辿り着く落ち着きどころなのでしょう。これからもいくどか買い求めることになりそうです。